訴訟のパターン ④夫婦をめぐる紛争

 

④夫婦をめぐる紛争

 

A.離婚の種類
   裁判所が関与する離婚は、「調停離婚」、「和解離婚」、「判決離婚」です。調停離婚は、家庭裁判所の調停手続で、当事者の合意が成立したもの、和解離婚と判決離婚は、調停がまとまらず、離婚訴訟が提起され、家庭裁判所又は、その上級審の高等裁判所で、当事者の合意が成立したときは和解離婚、合意が成立せず、判決となって、それが確定したとき(不服申立が出来なくなった状態)は、判決離婚です。
離婚届出は、いずれも、相手方の署名は不要で、上記裁判書類を添付し、単独で、役所へ届け出ます(報告的届出)。

B.離婚が出来るか
  「調停離婚」、「和解離婚」は、当事者の合意があって成立しますから、合意のない離婚、すなわち「判決離婚」によって離婚出来るかということは、離婚を認める確定判決を得ることが出来るかと言い換えられます。

1、破綻主義
 婚姻の破綻とは、夫婦が婚姻を続ける意思をなくし、共同生活が回復する見込みのなくなっ たことをいいます。回復しがたい婚姻破綻ともいいます。回復しがたいかどうかは、特に、 同居期間と較べて、別居の期間が重視されます。その際、離婚を請求する配偶者に破綻の責 任があるか否かを問わず、破綻のみによって離婚を認める考え方を「破綻主義」と呼んでい ます。
 ところで、日本の裁判所は、破綻主義の立場に立ちながら、これを徹底させているわけでは ありません。
 以下、夫婦関係が破綻に至って、離婚が認められることが多いのではないかと思われる例を あげます。
 ・性格の不一致(価値観の相違)
 ・度を過ぎた宗教活動
 ・性的不能(性交拒否・性的異常)
 ・嫁いびり
 ・うつ病、アルコール中毒、薬物中毒
 ・認知症
 ・難病(重度の身体障害)

2、信義則
 信義則とは、信義誠実の原則をいいます。夫婦関係についても、信義則は適用されます。で すから、夫婦の一方に、破綻について責任がある場合、例えば、不貞行為(配偶者以外の者 と性的関係を結ぶこと、一時的か、継続的かは問いません)があったり、不貞の立証は出来 ないが、配偶者以外の異性と親密な関係にあったり、配偶者に暴行・虐待をしたりしたとき などは、責任がある配偶者に対する離婚請求は、比較的容易に認められます。
 また、夫婦の双方について、破綻の責任があると、離婚が認められやすくなります。
 これに対し、夫婦関係が破綻していても、相手方配偶者に対する配慮(財産的保障)が必要 かと思われるケースもあります。この意味で、破綻主義は信義則にしたがい修正されます。
 特に、破綻について責任がある者からの離婚請求は、別居が長期間に及んでいるか(5年以 上)、扶養を要する子がいないか、相手方配偶者に精神的、経済的支援をしたかなどについて、離婚を認めるかどうかにあたり検討されます。

C.婚姻費用
 夫婦が別居し、離婚が確定しない間は、生活費(生計費などの日常的な支出、養育費・学費 など)の分担を取り決めることが必要です。具体的には、妻子らの生活費を、夫が現に負担しているかということです。
 婚姻費用(婚費と略称しています)の請求は、家庭裁判所に調停・審判の申し立てをします 。裁判所は、発表されている「算定表」にしたがい、夫婦の収入、子どもの人数や年令、家賃や住宅ローンの額などを考慮し、調停案を提示し、当事者の合意が成立しないときは審判で決定します。夫が現に生活費を負担していないときは、妻は、必ず、婚姻費用の請求をしておくことが必要です(婚姻費用の請求のみ、または、離婚の申し立てと合わせて)。夫に離婚後の毎月の養育費の支払いを、確実にしてもらうため、離婚前から金員支払いの習慣をつけておいてもらいたいからです。また、別居中に、夫が死亡した場合に備えるという意味もあります(遺族年金の支給は、夫の死亡当時、その者によって生計を維持したことが受給の要件です)。緊急のときは、審判前の保全処分を申し立てることができます。

 D.離婚に付随する手続
 裁判所が関与しない「協議離婚」、裁判所が関与する「調停離婚」、「和解離婚」、「判決 離婚」のいずれにおいても、未成年の子がいるときは、離婚と親権者の決定は一体として扱われます(前三者は、当事者の合意で、判決離婚は裁判所の判決で)。
 離婚と親権者の決定のほかに、夫婦で取り決めるか、または、裁判所が決めることとなる事項は、以下のとおりです。

 1、財産分与(年金分割を含む)
 夫婦が婚姻中に協力して形成した積極財産を清算することを財産分与といいます。夫婦のそ れぞれが仕事を持ち、各自で財産を管理し、生活費の支出のみを共同分担したにすぎないときなどを除き、典型的には、夫婦の収入が、夫名義の財産として形成されたとき、夫は妻に財産分与をして、清算する必要が生じるのです。夫名義で形成された財産を、夫婦の共同財産とみるのです。
 婚姻中に形成された財産ですから、婚姻前から所有していた財産や、相続した財産などは除外します。積極財産の清算ですから、消極財産を差し引いて共同財産とします。
 共同財産の範囲と評価額を決めて分割するのですが、分割割合は、夫婦の具体的な寄与度によります。原則として2分の1とされています(2分の1ルールと呼ばれています)。これは事案に応じて修正されます。例えば、夫が、経営者、医師、芸術家などであって、特殊な資格、努力、能力によって高額の資産形成がなされた場合は、夫の寄与度は上がります。

 ・ローン付住宅
 子どもがいるときは、妻が住宅に住み続けることを希望する例が多いのですが、所有名義の切り替えやローン残額の支払いなどの難問題が生じます。収入の乏しい妻は、金融機関との関係で、ローンを引き受けたり、所有名義の切り替えなどを認められないことが大半なのです。
 夫が、ローン残額を財産分与や慰藉料の支払いに代えて決済しくれればよいのですが、どうにもならないときは、所有名義はそのままで、夫婦のいずれかが、ローンの支払いを続けるか、または、妻は住宅を放棄し、ここから出て実家に戻るか、貸家を賃借するかなどの決断を迫られることとなります。

 ・退職金
 既に支払われた、或いは、現在支払われる退職金は清算の対象になりますが、将来受領する見込みの退職金は、支給されることが、ほぼ確実であることが必要です。
 いずれにしても、婚姻期間(同居期間)に相応する部分に限られます。

 ・年金分割
 夫婦が離婚する場合、働いた期間がない、或いは短期間である、賃金が低いなどの事情がある一方配偶者(通常は妻)は、婚姻期間中における他方配偶者(通常は夫)の労働に対する報酬に貢献があったと認められます。そして、妻は、社会保険事務所から得た年金情報にもとづき、調停や訴訟で、婚姻期間中の、夫の厚生年金や共済年金の分割請求をすると、平成20年3月31日以前の婚姻期間中は、ほぼ2分の1と、同年4月1日以降は、自動的に2分の1と決められます。妻が年金受給年令に達した場合、保険料納付実績に基いて算定された額の 年金受給権が、年金分割を受けた妻自身に発生するのです。
 厚生年金基金、国民年金、国民年金基金などは分割の対象とはなりません。
 離婚の種類にしたがい、「調停調書」、「和解調書」、「確定判決書」のいずれかを社会保険事務所に提出して標準報酬改定請求をいたします。

2、養育費
 別居や離婚にともなって、子どもを養育する親(通常は母)は、他方の親(通常は父)に対して養育費を請求できます。別居中は、婚姻費用に含まれますから、養育費という呼び名は、離婚が確定した日からとなります。
 養育費の請求は、離婚を求める調停や訴訟に付随した請求となります。
 養育費の算定は、婚姻費用と同じく発表されている「算定表」にしたがい、子どもの生活費を父母の収入の割合で按分し、原則として20才までの毎月払いとされています。
 算定表を越える養育費(例えば、私学や塾に通う費用、大学受験やその学費など)の請求は、親の学歴や教育的水準などにより相当であるなどの特別な事情の存在が必要とされています。

3、慰藉料
 慰藉料請求は、不法行為に基く損害賠償請求ですから、不法行為の一般的要件をそなえていることが必要です。
 婚姻関係を破綻させる行為が不法行為となるのです。
 妻に婚姻関係を破綻させた原因がある例は、あることはあるのですが、慰藉料請求となると、一般的には、夫の有責行為を指します。
 不貞行為(配偶者以外の者との肉体関係)を筆頭とし、暴力行為、悪意の遺棄、性交渉の不存在、過度のギャンブルやアルコールへの依存、生活費の不払いによる妻子の困窮などがあげられます。
 慰藉料請求は、離婚調停や離婚訴訟と併せて請求します(併合請求)。
 不貞行為の相手方(一般的には、第三者の女性)にも、併合して慰藉料の請求ができます(夫との共同不法行為)。一括解決を画るため、併合請求するのがよろしいでしょう。
 但し、夫婦関係が破綻した後に、関係をもった第三者の女性は、不法行為責任を負いません。
 慰藉料の請求は、300万円前後が多いようですが(最高500万円程度)、夫の有責性が高いほど、婚姻期間が長いほど、夫の資力が多いほど、慰藉料額は、高くなります。
 不貞行為の実情が悪質で、夫の資産が隠匿されるおそれのあるときは、保全処分(仮差押)を検討すべきです。

E、戸籍処理
 婚姻して、夫の氏(姓)を選んだ妻は、離婚に際し、婚姻前の氏とするか(離婚による復氏)、夫の氏のままとするか(婚氏続称)の、いずれかを選びます。仕事上の関係とか、子どもの氏をどうするかなどを考慮して決めます。 
 いずれにしても、「新戸籍の編成」をおすすめします(新しい人生の出発となるのですから)。
 子どもは、夫の戸籍のままに残りますから、養育する母の新しい戸籍にいれるためには、「子の氏の変更」を家庭裁判所に申し出て、許可を得てから、母の戸籍に入籍します(母が婚氏続称を選択していても、この手続が必要です)。

F、面接交渉
 日本では、父母の離婚により、一方の親が子どもの親権者となって子どもを養育するため、他方の親が、子どもと面接することを求め、その具体的条件の交渉を要求することを、面接 交渉と呼んでいます。
 通常、親権を譲った、または、これを失った父が、親権者となった母に対し、調停や審判を申し立て、面接の具体的条件(毎月の回数、何曜日、時間と場所、方法など)を決めようとします。
 家庭裁判所は、子どもの年令や気持、生活環境、父母の生活状況などから、「子の福祉」を基準として、面接交渉を認めたり、認めなかったりします。
 欧米のように、離婚後も父母が共同して親権を持ち、わかれた父が、自由闊達に子どもと会っていると聞くと、ほほえましく思うのですが、日本の風土では、父が、徹底して親権を得ようと争い、これが得られなかった後に、更に面接交渉を求めて争うと、母に多大の負担がかかると思います。父が、子らに養育費や学費、祝い事などの出費を惜しまなければ、母や子どもらもそれに応じ、面接に応じ易くなるでしょうし、子どもも、ある程度の年令に達すれば、自分で独自に、父とメールの交換をしたり、直接、出向いて会ったりすることもできるのですから、面接交渉をあまりにも法律的に無理強いするのは、どうかと思います。
 家庭裁判所が、審判で、文言をもって面接内容を決定し、その違反に対し、不履行1回何万円などと強制するのは、夫婦親子関係に対する国家の行き過ぎた干渉の嫌いがあるとみています。