訴訟のパターン ③不動産をめぐる紛争

 

③不動産をめぐる紛争

 

「土地」の所有権という観念が重要です。
 土地の位置や所有権の帰属に争いがあると、「所有権確認」の訴訟が必要です。
 他人によって土地の利用が根拠なく妨げられているときは、「土地引渡」、「建物収去土地引渡」の訴訟で判決にもとづき強制執行をします。引渡完了までの損害賠償を併せ求めておく必要もあります。
 また、土地は、登記により表示されていますので、登記が真の権利に合致しないときは、「移転登記」や「抹消登記」の手続を求める訴訟で、判決を得て登記を正します。 
 このような土地をめぐる紛争については、裁判中に対象(人や権利)が変化しても、後日、強制執行が出来るよう「仮処分決定」を求めておくこともあります。
 以上のほか、土地をめぐる紛争のパターンとして、土地が共有関係にあるとき、必要に応じ、「共有物分割」、隣地との境界に争いがあるとき、「土地境界確定」、隣地と通行をめぐる紛争があるときは、「通行権確認」などの各訴訟で解決を画ることがあります。
 完全な土地所有権に対し、これを制限する法律制度として、「借地」があります。借地権の発生・消滅をめぐる紛争や、「地代増減請求」などの訴訟があります。
 不動産のもう一つである「建物」については、上記の「土地」について述べたことがあてはまる部分も多くあります。
 近時、区分所有建物(マンション)の管理をめぐる紛争が増えてきています。


不動産執行の一事例
神戸市長田区所在の、いわゆるケミカル関係者が占拠していた200坪を越える土地を更地にする仕事を、まだ当時、不動産訴訟の経験も浅い段階で、私が1人で引き受けることになりました。もと借地であったものが、10数年間、最高裁まで争われ、別の弁護士が借地権なしと確定させたのですが、その間、雨後のたけのこの様に、10戸以上の工場、工作物、居住建物が建ち並び、不法占拠状態となってしまっていたのです。地上物件を誰が所有し、誰が占有(使用)しているか全く判らない状態でした。
長らく法的解決を放置された土地所有者に申し訳なく、①最短期間での解決②着手金なし、但し諸経費をふんだんに出していただく(物量作戦)③仮執行付判決と仮処分決定の多用を目標としました。戦国時代の国盗り(隣国を削り取る)の方法(武力と調略)のうち、武力(問答無用の執行力)に頼ることにしたのです。
道路に面した土地から、順次、地上物件の「処分禁止の仮処分」、占有者に対する「占有移転禁止・執行官保管の仮処分」手続をとりながら、本訴を進め、物件撤去・占有者退去の執行を進めました。
執行手続のうち、特に印象に残っているのは、2階建の大きなケミカル工場で「占有移転禁止・執行官保管の仮処分」をうっているのに倒産したとして、あちこちに配布された屋号変更の文書を入手したので、仮処分決定違反として、「断行」の仮処分決定(仮処分で明け渡しが出来る決定)を得、大阪から人相の悪い多くの人夫を配下とする執行屋を呼び寄せ、朝から操業中であるのに退去の執行に当らせました。大騒動でした。
もう一つは、ヤクザが家族と共に居住している建物で、家屋収去・建物退去の本執行に入る前に、私は、機会があって会いましたが、「若衆を走らすぞ、血の雨、降らすぞ」と脅かされました。やむなく、これも執行屋を頼み執行しましたが、執行途中で、ヤクザの配下の者が、道路からチラチラ執行状況を見ながら通り過ぎていったのが記憶にあります。
なお、いずれかの執行現場で、「面倒なことをしなくても、千万円くれたら、火つけたるぞ」という弥次馬の声も飛んでいました。ある執行官は、迎えに行くと、いつも便所に長く入ってから出てきてました(キバって執行現場に出向いてくれたのでしょう)。
毎日毎日、書面の作成や現場へ出向くことを繰りかえし、3年足らずで、すべての占有者を立ち退かせ、地上物件をすべて撤去し、更地化を完了させたうえ、損害賠償金千万円を獲得し、やっと依頼者に対する責任を果たしました。
この事件で得た教訓は、①相手方の抵抗を少なくする、②ムダ金を使わない、③自分の身の安全を画るというところです。
その後の強制執行でも、地上建物、工作物の全面撤去のほか、部分的な削り取り執行もありますし、通路上や、宅地前面に置かれた物件撤去の執行もあります(特に悪質なのは、金を脅し取ろうとして、このような行為に及ぶ者がいることです)。テントで覆って数日のうちに段差のある隣地に跨がってコンクリート擁壁を造ってしまった建売屋がいました(確定判決を得て、土建屋に越境部分を削り取ってもらいました、みごとに削り取れました)。以上